大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(う)1390号 判決

被告人 牧米雄

〔抄 録〕

弁護人の控訴趣意について。

一、第一点

本件犯罪は、昭和二十六年三月頃から同年八月頃までの間に行われた所為であつて、その犯行は、同年七月十五日廃止された税務代理士法とその廃止と同時に施行されるに至つた税理士法の各実施時期に跨がつて行われたものではあるが、本件犯罪は、右両法の実施時期に亙つて継続実行された犯罪であつて右前後の行為を包括し一罪として論ずべき場合であるから、その行為の終了当時の法律を適用しなければならない。従つて、原審が、税理士法施行前の行為に対し、税理代理士法第二十一条第四条第一項を適用することなく、単に、行為終了時の処罰法規たる税理士法第五十九条のみを適用処断したことは正当である。而して、本件犯罪が、税理士法第五十九条によつて処罰せられる所以のものは、ただ同法第五十二条の規定に違背するが故のみであることは、同法の規定自体に徴し洵に明白であつて、原審が右第五十二条を適用することなく、同法第五十六条を適用したことは、明らかに原審の表示上の錯誤に出でた単なる誤記と認むるを相当とするから、原判決にこれが誤記あるの故をもつて、敢てこれを破棄しなければならない事由とするには足りない。論旨はすべて理由がない。

二、第二点

公判廷でした押収の事実は、これを公判調書に記載するをもつて足り、更めて押収調書を作成するの必要はない。原審第一及び第二回の各公判調書とそれぞれ一体を為している各証拠関係目録によれば、所論各法人税確定申告書は原審において昭和二十八年領第八号の一乃至四として、法人税更正決定決議書綴は同領号の五としてそれぞれ領置されていることが明瞭である果して然らば所論において、原審が、或いは右各証拠物につき押収調書を作成しなかつたといい、或いは、領置手続を施行しなかつたと主張して原判決を非難する論旨は理由がない。尤も、これら証拠物について、当時者が同意或いは不同意の意見を表明したか何うかについては、記録上これを認め得るに由のないことは、洵に所論のとおりであるが、当事者の提出した証拠にして、本来、証拠とすることのできるものである以上、これを証拠とすることについての当事者の同意を必要とする限りではないし、それに、斯かる場合、これを証拠として事実認定の資料として採用するには、必ず、予かじめ、当事者にその同意不同意を徴しなければならないとする法律上の根拠は、何もないのであるから、原審が右証拠物のうち原判示事実認定の資料に採用した所論右各法人税確定申告書が果して当事者の同意がなくとも本来証拠とし得るものであるか何うかを考察するのに、記録及び原審証拠調の結果によれば、右各申告書は、孰れも、長野地方検察庁の検察官において須坂税務署の税務官吏佐々木重音から領置したものにかかり、その形式及び記載内容にも照らし、それらが孰れも、原判示各委員等を申告者とする須坂税務署長宛昭和二十六年度法人税の確定又は中間申告書の綴であることが明白であつて、当事者においてこれを証拠とすることに同意したと否とを問わず、刑事訴訟法第三百二十三条第三号にいわゆる特に信用すべき情況の下に作成された書面とあるに該当し、同条により証拠とすることができるものであるということができる。されば、原審が、これらを証拠とすることについて当事者の同意を得ることなく、また、予かじめ、当事者にその同意、不同意を問うことなく、これらにつき刑事訴訟法所定の証拠調を履践し(而して、これが証拠調に関し当事者において異議を述べた事跡はない)もつて事実認定の資料に供したことには何等批議すべきものあるを見ない。而してまた証拠が本来証拠とし得られるものであることの法律上の根拠(例えば、本件においては刑事訴訟法第三百二十三条第三号)もこれを公判調書の上に示すべきことも何等法律の命ずるところではないのであるから、原審が、右法律上の証拠を示すところがなかつたからといつて毫も批難さるべき限りではない。論旨はすべて理由がない。

註 本件の原判決認定の犯罪事実は「被告人は税務代理士又は税理士でないのに拘らず二六・三より二六・八迄の間〇〇町の自己の事務所等でA外九会社よりの依頼を受け各事業年度法人税の申告についてその相談に応じ且つ同事業年度法人税の確定又は中間申告書を作成交付し、よつてその手数料として一ケ所より一五〇〇円乃至一〇〇〇〇円合計四七〇〇〇円を受領し以つて税務代理士又は税理士の業務を営んだものである」というにある。

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